注文住宅の購入を検討している方にとって、住宅展示場は家づくりの第一歩となる重要な場所です。しかし、初めて訪れる方にとって「見学だけで行っても良いのか」「どのように回れば効率的なのか」など、多くの疑問があるのではないでしょうか。
この記事では、住宅展示場について知っておくべき基本情報から、効率的な見学方法、注意点まで網羅的に解説します。これから家づくりを始める方、すでに検討を進めている方、どちらにも役立つ情報をお届けします。
住宅展示場とは?基本的な仕組みを理解しよう
住宅展示場の定義と役割
住宅展示場とは、複数のハウスメーカーや工務店が建てたモデルハウスが集まり、好きなモデルハウスを見学できる場所です。ハウスメーカー各社のアイディアが詰まっていて、家づくりの情報収集に最適な場所として機能しています。
住宅展示場には、大きく分けて2つのタイプがあります:
種類 | 特徴 |
---|---|
総合住宅展示場 | 複数のハウスメーカーが一つの敷地に出展 |
単独展示場 | 1つのハウスメーカーが独自に運営 |
ほとんどの住宅展示場は、モデルハウスの他にセンターハウスを設けています。センターハウスとは、住宅展示場全体のインフォメーション機能を持つ建物です。
住宅展示場の運営構造
住宅展示場は、イオンモールなどと同じように考えることができるのですが、各エリア毎に土地を貸し出して、モデルハウスという「お店」を出店してもらうテナント型のビジネスです。
運営には以下の関係者が関わっています:
- 新聞社・テレビ局:住宅展示場のオーナー
- 住宅展示場運営会社:実際の運営業務を担当
- ハウスメーカー・工務店:モデルハウスを出展
新聞社やテレビ局は、新聞やテレビといったマスコミメディアを持っていますので、幅広い告知を行うことが可能なため、集客面で大きなメリットがあります。
住宅展示場は見学だけでも行ける?よくある疑問を解決
購入予定がなくても大丈夫?
**答えは「YES」です。**住宅展示場は見学だけで行っても良いのでしょうか?結論から申し上げると、見学だけでもOKです。
実際のデータを見ても、この事実が裏付けられています:
住宅生産振興財団の「総合住宅展示場来場者アンケート2023調査報告書」によると、住宅計画の実現時期について「2年以上先・未定」と答えた人の割合は40.3%ともっとも多くなっています。
予約は必要?
基本的には予約なしでもOKです。飛び込みでモデルハウスを訪問した場合でも、自由に見学することができます。
ただし、以下の場合は予約をおすすめします:
シチュエーション | 理由 |
---|---|
土日祝日の見学 | 混雑により待ち時間が発生する可能性 |
詳しい説明を希望 | 営業担当者による丁寧な案内が受けられる |
イベント参加 | 先着順や定員制の場合がある |
営業を受けるのが心配な場合
住宅展示場で強引な勧誘を避けたい場合は「今回は情報収集のために見学している」「今すぐに購入する予定はない」とはっきり伝えておくのがおすすめです。
住宅展示場見学のメリット・デメリット
住宅展示場見学の5つのメリット
1. 複数社を効率的に比較検討できる
住宅展示場には複数のハウスメーカーのモデルハウスが建っています。ハウスメーカーの特徴や強みを同時に比較できるのは、住宅展示場ならではのメリットです。
2. 実物の家を体感できる
住宅展示場では、カタログやホームページだけではわからない住み心地を体感できます。実際に見たり触れたりすることで、新しく発見することも多いのが大きな魅力です。
3. 最新設備やトレンドを確認できる
水回りや太陽光発電パネルなど、最新の住宅設備について理解を深めることもできるでしょう。
4. 専門家に直接相談できる
住宅展示場では、ハウスメーカーや工務店のスタッフが常駐しており、直接質問や相談ができます。
5. 豊富な資料を収集できる
複数のハウスメーカーのカタログを一度に集められる点もメリットです。住宅展示場にはカタログを始めとした資料が数多く用意されています。
住宅展示場見学の注意すべきデメリット
1. 現実とのギャップに注意
住宅展示場のモデルハウスは、スケールが大きくグレードが高い住宅になっています。モデルハウスと同じような家を建てようとすると、高額な費用がかかるでしょう。
実際のモデルハウスの仕様:
- 建築費:建物1棟あたりの建設費は5,000~7,000万円
- サイズ:住宅展示場の建物は、一般的な3~4人家族が住む家の1.5〜2倍くらいのサイズで建てることが多い
2. 時間がかかる
住宅展示場は広く、1つのモデルハウスを見学するだけでも30分〜1時間程度かかります。ハウスメーカーの担当者からの説明を聞きながら、じっくりとモデルハウスを見学する場合の所要時間の目安は、1軒あたり1~2時間とされています。
3. 営業活動の可能性
住宅展示場では、来場者にアンケート記入を求めるのが一般的です。名前や連絡先を記入すると、その後の電話やDMでの勧誘がある可能性が高くなるため注意が必要です。
効率的な住宅展示場の回り方
事前準備のチェックポイント
1. 家族の希望条件を整理する
住みたい家に求めるものは、家族の年齢や性別、立場により大きく変わってくるものです。せっかく住宅展示場へ行くなら、事前に家族で住みたい家について話し合い、求める条件を共有してから皆で見学に向かいましょう。
整理すべき項目:
- 予算範囲
- 希望する間取り
- 重視する性能(断熱性、耐震性など)
- 好みのデザインテイスト
- 必要な設備
2. 見学するハウスメーカーを3社程度に絞る
住宅展示場に入っているハウスメーカーの特徴を調べ、気になる会社を3社ほどピックアップしておきます。その3社を優先的に見学してまわり、余った時間でほかのモデルハウスをまわりましょう。
3. 質問リストを作成する
事前に聞きたいことを整理しておくことで、効率的な見学が可能になります:
構造・性能に関する質問
- 耐震性能の等級は?
- 断熱性能(UA値)は?
- 気密性能(C値)は?
費用に関する質問
- 坪単価の目安は?
- 標準仕様とオプションの範囲は?
- 総額の目安は?
アフターサービスに関する質問
- 保証期間は?
- メンテナンス体制は?
- 定期点検の頻度は?
当日の効率的な回り方
1. センターハウスで情報収集
是非センターハウスにお立ち寄りください。住宅展示場の総合案内所で、ハウスメーカーに属さない中京テレビグループのスタッフが常駐しております。モデルハウスの長が分かる会場案内図や、各メーカーの資料など情報が集まる場所として活用しましょう。
2. 優先順位順に見学する
総合住宅展示場来場者アンケート2019調査報告書によると、住宅展示場のモデルハウスに入る件数は平均で2.54棟。半数以上の人が2棟以内と回答しています。
推奨スケジュール:
時間 | 活動内容 |
---|---|
10:00-10:30 | センターハウスで情報収集・地図確認 |
10:30-12:00 | 第1優先ハウスメーカー見学 |
12:00-13:00 | 昼食・休憩 |
13:00-14:30 | 第2優先ハウスメーカー見学 |
14:30-16:00 | 第3優先ハウスメーカー見学 |
16:00-16:30 | 情報整理・追加質問 |
3. 見学時のチェックポイント
構造・性能面
- 壁を透明にして構造が確認できるタイプのモデルハウスもあるため、自分の目で確かめることもできます
- 断熱性能の体感(室内の温度差など)
- 遮音性能の確認
間取り・動線面
- 生活動線や家事動線をイメージすることが大切です。例えば、キッチンやリビング、寝室などの各部屋が素晴らしいものであっても、実際に部屋間を動いてみないことには過ごしやすい家なのかどうかわかりません
設備・仕様面
- キッチン・バスルームの使い勝手
- 収納の配置と容量
- 照明・コンセントの位置
見学時の持ち物・服装
推奨する持ち物
住宅展示場見学には、持参すると便利なものがいくつかあります:
- 筆記用具:メモ取り用
- カメラ・スマートフォン:記録用(撮影可能か確認)
- メジャー:寸法確認用
- 大きめのバッグ:資料収納用
- 質問リスト:事前準備したもの
適切な服装
動きやすい服装で、履き慣れた靴がおすすめ。靴下は滑りにくいものをチョイスしましょう。モデルルーム内は土足禁止の場合が多いため、脱ぎ履きしやすい靴で参加するとスムーズです。
住宅展示場見学の時間と流れ
所要時間の目安
住宅生産振興財団による「20・30代来場者の住宅に関するアンケート調査報告(2006年度)」によると、モデルハウス1棟当たりの平均滞在時間は、約20~30分でした。
ただし、これは簡単な見学の場合です。モデルハウスの担当者と話したりアンケート記入したりする時間や移動時間など、実際はもう少しかかることを想定して、1棟当たり1時間程の余裕を持っておくと良いでしょう。
一般的な見学の流れ
1. 受付・アンケート記入
モデルハウスを見学する際の流れは、初めに受付用紙の記入があることが多いです。見学だけを希望するならこの時点で伝えて差し支えありません。
2. 概要説明
一般的には担当者から物件についての概要説明や間取りの紹介などを受けます。
3. 内部見学
実際にモデルハウス内を回り、各部屋の特徴や設備を確認します。
4. 質疑応答
質問があれば答えてくれるので気軽に話してみましょう。
5. 資料提供・今後の相談
希望に応じて詳細資料の提供や、今後の相談について案内があります。
住宅展示場見学のベストタイミング
推奨時間帯
落ち着いて見学をするためには、来場者の多い時間帯はできるだけ避けたほうがよいでしょう。土日であれば営業を開始して間もない時間帯か、可能であれば平日がおすすめです。
時間帯 | メリット | デメリット |
---|---|---|
平日 | ・混雑していない<br>・じっくり相談できる | ・仕事を休む必要がある |
土日朝 | ・比較的空いている<br>・丸一日使える | ・午後は混雑する |
土日午後 | ・家族全員で参加しやすい | ・混雑している |
営業時間
住宅展示場の営業時間は、一般的には、火曜もしくは水曜が定休で10:00~18:00の時間帯で営業しているところが多いようです。
避けるべき時期
土日祝日や長期休暇中の昼間は、住宅展示場が非常に混雑しやすい時間帯です。予約なしで訪問すると、モデルハウスに入れない場合や、見学に長時間待たされる可能性があります。
注文住宅の費用相場と住宅展示場の関係
注文住宅の費用相場
国土交通省によると、注文住宅にかかる費用の全国平均は3,935万円(土地の購入資金は除く)という結果になっています。三大都市圏(首都圏、近畿圏、中部圏)の平均費用額は4,504万円となっています。
住宅展示場のコストと価格への影響
住宅展示場の運営には多額の費用がかかり、これが最終的な住宅価格に影響を与えています:
住宅展示場の年間運営費(1棟あたり)
建物1棟あたりの建設費 … 5,000~7,000万円 出展料 … 150万円 × 12か月 = 1,800万円/年 光熱費などの維持費 … 150~300万円 x 12か月 = 1,800万円~3,600万円/年 人件費・広告費 … 250~300万円 = 3,000万円 ~ 3,600万円/年
モデルハウス1棟あたりの受注棟数は、月2棟位、年間24棟程度が平均的と思われます。これらのコストが最終的に住宅価格に転嫁されるため、住宅展示場に出展しているハウスメーカーの住宅は一般的に価格が高めになる傾向があります。
予算別住宅のイメージ
予算2,000万円台の場合、全国平均よりも費用が低く、2,000万円台前半では、ローコスト住宅に分類されることが多いです。
予算帯 | 建築可能な住宅の特徴 |
---|---|
1,000万円台 | ・ローコスト住宅<br>・規格化された間取り<br>・標準仕様中心 |
2,000万円台 | ・少しグレードアップした資材<br>・外壁にタイル使用可能<br>・最新式設備の一部導入可能 |
3,000万円台 | ・全国平均レベル<br>・設備の選択肢が広がる |
4,000万円台 | ・首都圏平均レベル<br>・高品質な住宅 |
住宅展示場選びのポイント
立地による選び方
住宅展示場によっては、ある特定のテーマ(「ハイグレード仕様」「長期優良住宅」「敷地40坪程度の一般的な住宅」「都市型最新モデル」など)に沿った住宅のみを集めて展示している場合もあります。
出展メーカーによる選び方
住宅展示場に出展している住宅会社にはさまざまなタイプがありますが、基本的には、注文住宅を主に扱っている住宅会社がほとんどです。
出展する住宅会社の特徴:
- 大手ハウスメーカー:技術力・品質管理力が高い
- ローコストメーカー:価格競争力がある
- 地元工務店:地域密着型のサービス
大手ハウスメーカーだけでなく、ローコストメーカーや地元工務店が出店しているケースもあります。しかし、住宅展示場に出展する為にはコストもかかり、主催者の審査が必要な場合もある為、基本的には大手ハウスメーカーの出展がメインになっています。
住宅展示場での注意点
営業対応に関する注意点
1. アンケート記入について
アンケート記入は任意ですが、記入内容によってその後の営業活動の頻度が変わります:
- 具体的な購入予定がない場合:その旨を明記
- 連絡を希望しない場合:「連絡不要」と記載
- 資料のみ希望の場合:郵送やメール送付を選択
2. 営業担当者との関係
住宅展示場で担当してもらった営業担当者との関係は、住宅購入後も続くことが一般的です。相性が合わない場合は、早めに変更を申し出ることが重要です。
予算感覚のズレに注意
住宅展示場のモデルハウスは、一度に何組ものお客様が見学や打ち合わせをできるよう、一般的な住宅よりも広く作られています。また、標準仕様にオプシンを加えたハイグレードな建材や構造、設備をふんだんに採用しているのも特徴です。
このため、現実の予算との乖離に注意が必要です:
- モデルハウスの仕様は特別グレード
- 実際の建築可能な仕様とは異なる
- 標準仕様とオプションの区別を明確に
時間管理の重要性
1日で見て回れるモデルハウスの数は3軒ほどが限界でしょう。これを納得がいくまで、契約したいと思えるハウスメーカーと出会えるまで続けるとなると、何度も住宅展示場へ通うことになります。
効率的な見学のために:
- 事前の絞り込みが重要
- 1日の見学数を制限
- 複数回に分けて見学を計画
住宅展示場見学後にすべきこと
情報の整理
見学後には情報整理や感想の共有を行うことが重要です。
整理すべき項目:
- 各社の特徴:工法、性能、デザイン
- 価格帯:坪単価、総額の目安
- 印象:営業担当者、モデルハウスの印象
- 疑問点:追加で確認したい内容
家族での情報共有
見学に参加できなかった家族にも情報を共有し、次回の見学計画を立てましょう。
追加調査
住宅展示場で得た情報をもとに、以下の追加調査を行うことをおすすめします:
- 施工事例の確認:実際に建築された住宅の見学
- 口コミ・評判の調査:インターネットでの評価確認
- 資金計画の詳細検討:住宅ローンの事前審査など
住宅展示場以外の情報収集方法
完成見学会・新築見学会
完成見学会・新築見学会とは、工務店やハウスメーカーが顧客に許可を取り、建設・購入した新築住宅をモデルハウスとして期間限定で公開するイベントです。
住宅展示場との違い:
項目 | 住宅展示場 | 完成見学会 |
---|---|---|
サイズ | 大きめの特別仕様 | 実際の居住サイズ |
予約 | 基本不要 | 必要な場合が多い |
期間 | 常設 | 期間限定 |
コスト感 | 高級仕様 | 実際の仕様 |
オンライン見学
コロナ禍をきっかけにオンライン化が加速した住宅市場において、展示場だけを頼りにした集客や営業では生き残れない可能性も視野に今後の戦略を練り直さなくてはなりません。
オンライン見学のメリット:
- 移動時間が不要
- 複数社を効率的に比較
- 録画による見返しが可能
- 子供がいても参加しやすい
まとめ:住宅展示場を最大限活用するために
住宅展示場は、注文住宅の検討において非常に有効な情報収集手段です。しかし、効果的に活用するためには適切な準備と理解が必要です。
成功する住宅展示場見学のポイント
- 事前準備の徹底
- 家族の希望条件を整理
- 見学するハウスメーカーを3社程度に絞り込み
- 質問リストの作成
- 現実的な視点の維持
- モデルハウスは特別仕様であることを理解
- 標準仕様とオプションの区別を明確に
- 予算との乖離に注意
- 効率的な時間管理
- 平日や土日の朝の時間帯を選択
- 1日の見学数を制限
- 事前予約の活用
- 情報の活用
- 見学後の情報整理
- 家族での共有
- 追加調査の実施
最終的な判断材料として
住宅展示場での見学は、家づくりの第一歩として非常に有効ですが、最終的な判断には以下も併せて検討することをおすすめします:
- 実際の施工事例の見学
- 資金計画の詳細検討
- アフターサービスの確認
- 地域での評判調査
注文住宅を建てる際は、ハウスメーカーが建てている実際の住宅が公開されているのを見てイメージを掴むことが大切です。そのためにも、住宅展示場でモデルハウスを見学しましょう。
住宅展示場を効果的に活用し、理想のマイホーム実現に向けて、一歩ずつ着実に進めていきましょう。家づくりは人生で最も大きな買い物の一つです。十分な情報収集と検討を重ね、後悔のない選択をしてください。
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