注文住宅をお考えの皆さんにとって、「長期優良住宅」という言葉を目にする機会が増えているのではないでしょうか。この記事では、長期優良住宅の基本的な概念から最新の認定基準、豊富なメリット、注意すべきデメリット、そして申請手続きまで、初心者の方にもわかりやすく詳しく解説します。
【この記事のポイント】
- 長期優良住宅とは何か、なぜ注目されているのか
- 2025年最新の認定基準と申請方法
- 最大455万円の住宅ローン控除をはじめとした豊富なメリット
- 建築コストや手続きにかかるデメリット
- 申請時の注意点と選ぶべき住宅会社のポイント
長期優良住宅とは?基本的な概念を理解しよう
長期優良住宅の定義
長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するために、大きく分けて以下のような措置が講じられている住宅を指します。
具体的には、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」の基準を満たした住宅で、平成21年(2009年)にスタートした「長期優良住宅認定制度」の基準をクリアし、認定を受けている家のことです。
制度創設の背景と目的
従来の「つくっては壊す」スクラップ&ビルド型の社会から、「いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う」ストック活用型の社会への転換を目的として、長期優良住宅制度が創設されました。
この制度の根本的な考え方は、「孫の代まで住める家を建てる」ことにあります。
長期優良住宅の普及状況
2023年3月末時点、新築戸建着工件数比で29.3%が長期優良住宅認定を受けており、割合は増加傾向にあります。これは、近年は、新築戸建住宅の約4戸に1戸が長期優良住宅の認定を取得していることを意味しており、注文住宅市場において長期優良住宅が重要な選択肢となっていることがわかります。
長期優良住宅の認定基準を詳しく解説【2025年最新】
長期優良住宅として認定されるためには、厳格な基準をクリアする必要があります。長期優良住宅の認定基準は全部で10項目です。
1. 劣化対策
長期優良住宅は、数世代にわたって利用できる構造躯体を有していなければなりません。劣化対策等級3(3世代まで住宅が使用できる)+αを満たし、かつ以下の通り、構造種類に応じた基準を満たす必要があります。
木造住宅の場合の具体的な要件:
- 床下や小屋裏に点検口を設置し、床下空間に33センチ以上の高さを確保する
- 構造躯体が3世代(75年~95年程度)継続して使用できる措置
2. 耐震性
数百年に一度程度の極めて稀な地震が発生しても、損傷レベルを低減できる措置が施されている必要があります。
要求される耐震性能:
- 耐震等級2以上
- または耐震等級1かつ、安全限界時の層間変形が1/100(木造は1/40)以下
3. 維持管理・更新の容易性
住宅に使われる設備や配管は、構造躯体よりも短寿命です。それらの点検や清掃、補修、更新を容易に進められる措置が講じられていることも、長期優良住宅の基準となっています。
具体的な要件:
- 戸建住宅・共同住宅ともに、専用配管の維持管理対策等級3
- 共同住宅では、共用部配管・排水管にも等級3が必要
4. 省エネルギー性
長期優良住宅は、断熱性能などが確保され、一定以上の省エネ性を有していなければなりません。断熱性能等級5、かつ一次エネルギー消費量等級6を満たす必要があります。
5. 居住環境
長期優良住宅には、地域に溶け込み、良好な景観の維持向上への寄与が求められます。
6. 住戸面積
一戸建ての場合:
- 床面積の合計が75㎡以上
- 少なくとも1つの階の床面積が、階段部分を除いて40m2以上
共同住宅の場合:
- 床面積の合計が55㎡以上
7. 維持保全計画
維持保全計画とは、建築時から将来を見据えて、点検・補修が定期的になされる計画があることを示します。
対象となる部分:
- 構造耐力上主要な部分
- 雨水の浸入を防止する部分
- 給水・排水設備
長期優良住宅の維持保全期間は30年以上であり、10年以内ごとに点検しなければなりません。
8. 可変性(共同住宅のみ)
可変性とは、暮らす人のライフスタイルに合わせて、間取りを変更できる措置があることを示します。共同住宅にのみ適用される基準で、躯体の天井高2,650mm以上が求められます。
9. バリアフリー性(共同住宅のみ)
将来的にバリアフリー化が必要になった際、改修可能な措置が講じられている必要があります。
10. 災害配慮
自然災害が起きたときに、被害を防止・軽減できる措置が必要です。ハザードマップでリスクが示されている地域では、所轄行政庁が定める措置を講じる必要があります。
長期優良住宅の7つのメリット
長期優良住宅には多くのメリットがあります。特に経済的なメリットが大きく、長期的に見て非常にお得な制度となっています。
1. 住宅ローン控除の拡充【最大455万円】
長期優良住宅では、住宅ローン控除の最大控除額が増えるというメリットがある。
2025年度の住宅ローン控除上限額
住宅の種類 | 借入限度額 | 最大控除額(13年間) |
---|---|---|
一般住宅 | 3,000万円 | 273万円 |
長期優良住宅 | 5,000万円 | 455万円 |
※最大額455万円は、子育て世帯(子の年齢19歳未満)と、夫・妻のいずれかが40歳未満の夫婦世帯が対象。その他の世帯は409.5万円
控除額の計算方法: ローン控除額 = 年末借入金残高 × 控除率(0.7%)
2. フラット35の金利優遇
フラット35において、フラット35S(ZEH)を利用できる住宅が長期優良住宅の場合、当初5年間年▲1.0%の金利引下げとなる。
3. 投資型減税
住宅ローンを利用せずに長期優良住宅を買う場合も、投資型減税による控除が受けられます。
- 長期優良住宅を建てるためにかかった「掛かり増し費用」の10%が所得税から控除される制度
- 控除対象費用の上限:500万円
4. 固定資産税の減税期間延長
新築住宅を建てると固定資産税は一定期間2分の1に軽減されます。減税期間が、長期優良住宅では一般住宅よりも長く設定されています。
固定資産税減税期間
住宅の種類 | 一般住宅 | 長期優良住宅 |
---|---|---|
戸建住宅 | 3年間 | 5年間 |
マンション | 5年間 | 7年間 |
5. 不動産取得税の軽減
新築住宅の取得時に支払う不動産取得税についても、控除額が優遇されます。
不動産取得税の控除額
住宅の種類 | 控除額 |
---|---|
一般住宅 | 1,200万円 |
長期優良住宅 | 1,300万円 |
6. 登録免許税の軽減
建物を登記するとき登録免許税がかかりますが、長期優良住宅では税率が大幅に軽減されます。
登録免許税率(保存登記)
住宅の種類 | 本則税率 | 一般住宅 | 長期優良住宅 |
---|---|---|---|
戸建住宅 | 0.4% | 0.15% | 0.1% |
マンション | 0.4% | 0.15% | 0.1% |
7. 資産価値の維持
長期優良住宅は一般的な住宅よりも長く使うことを前提に建てられた住宅なので、建物の劣化が少なく、資産価値が落ちにくいという特徴があります。
長期優良住宅の4つのデメリット
メリットが多い長期優良住宅ですが、いくつかのデメリットも存在します。これらを理解した上で判断することが重要です。
1. 建築コストの増加
長期優良住宅の基準を満たすためには、高性能な断熱材や耐震構造などを導入する必要があるため、建築コストが高くなります。
一般に通常の住宅より1.1~1.3倍ほどの費用がかかるとされています。
2. 申請費用と手続きの負担
長期優良住宅の申請には、一般の住宅よりも一定の費用や手間がかかります。
申請関連の費用:
- 申請・審査費用:5万~6万円程度
- 代行手数料込み:20万~30万円程度
3. 維持保全の義務とコスト
家が完成してからも10年以内ごとに30年以上の間、点検や必要に応じた修繕、改良をし、その記録を作成・保存することになる。
維持保全の具体的な要求:
- 30年以上の維持保全期間
- 10年以内ごとの定期点検
- 地震や台風時の臨時点検
- 点検・修繕記録の保管義務
4. 手続きの複雑さ
長期優良住宅は手続きがとても複雑で、専門的な知識が必要になるため、多くの方が建築会社に代行を依頼することになります。
長期優良住宅の申請方法と手続きの流れ
申請の基本的な流れ
長期優良住宅認定申請に必要な書類は、以下の通りです:
- 事前相談・計画立案
- 所管行政庁や建築会社との相談
- 長期優良住宅に対応した設計の検討
- 登録住宅性能評価機関での事前審査
- まず、登録住宅性能評価機関に設計が長期使用構造であるか確認してもらえるよう、申請します
- 確認書の交付を受ける
- 所管行政庁への認定申請
- 登録住宅性能評価機関から確認書等が交付されたら、認定申請書と添付図書とともに、所轄行政庁に長期優良住宅認定の申請をします
- 適合審査・認定通知
- 所管行政庁による審査
- 認定通知書の交付
- 工事着工・完了報告
- 認定通知後の着工
- 建築工事が完了した際に、工事が完了した旨を報告する必要があります
必要書類一覧
主な必要書類:
- 長期優良住宅建築等計画認定申請書
- 設計図書(配置図、各階平面図、立面図、断面図等)
- 構造計算書
- 維持保全計画書
- 確認書(登録住宅性能評価機関発行)
申請時の注意点
- 着工前の申請が必須 着工前に所管行政庁に申請する必要があります
- 建築会社の選定が重要 長期優良住宅の建築実績が多いか確認しましょう
- 維持保全計画の理解 認定後30年以上にわたる維持保全計画への理解と実行意志が必要
長期優良住宅を選ぶべき人・避けるべき人
長期優良住宅をおすすめする人
以下のような方には長期優良住宅がおすすめです:
- 長期居住予定の方 若いうちに建てて40年、50年住む、または子どもや孫に引き継いでもらうなら、長期優良住宅で暮らすのが安心
- 税制メリットを最大化したい方 住宅ローン控除や各種税制優遇を最大限活用したい方
- 高性能住宅を求める方 耐震性、省エネ性、耐久性の高い住宅を求める方
- 資産価値を重視する方 将来の売却や相続を考慮し、資産価値の維持を重視する方
慎重に検討すべき人
- 短期居住予定の方 自分たちの代だけで取り壊しや建て替えになるならコストをかけてまで認定を受けなくてもいいかもしれません
- 初期費用を抑えたい方 建築コストの増加や申請費用が負担となる方
- 維持管理に消極的な方 定期的な点検や記録保管を負担に感じる方
2025年度利用可能な補助金制度
長期優良住宅では、認定によるメリットに加えて、各種補助金制度も活用できます。
子育てグリーン住宅支援事業
「子育て世帯もしくは若者夫婦世帯」が、2022年10月1日に認定を受けた長期優良住宅を新築で購入した場合は、「子育てグリーン住宅支援事業」から最大160万円の補助金が受け取れる。
ZEH支援事業
長期優良住宅がZEH基準を満たす場合、ZEH関連の補助金も併用可能です。
長期優良住宅化リフォーム推進事業
リフォームによって長期優良住宅の認定を受ける場合は、最大30万円の補助金が受け取れる。
よくある質問(FAQ)
Q1. 長期優良住宅は本当にお得なのでしょうか?
A. 初期費用は高くなりますが、税制優遇や金利優遇、維持管理コストの削減を総合的に考慮すると、長期的にはメリットが大きいケースが多いです。特に長期居住を予定している方には推奨されます。
Q2. 申請手続きは自分でもできますか?
A. 理論上は可能ですが、専門的な知識が必要で複雑なため、実際には建築会社や工務店に代行してもらうのが一般的です。
Q3. 認定後に計画変更はできますか?
A. 軽微な変更は可能ですが、大幅な変更の場合は変更認定申請が必要になります。事前に所管行政庁に確認することが重要です。
Q4. 維持保全を怠った場合はどうなりますか?
A. 認定の取り消しや、将来的な税制優遇の適用除外などのリスクがあります。定期的な点検と記録保管は必須です。
まとめ:長期優良住宅で理想の住まいを実現しよう
長期優良住宅は、初期費用や手続きの負担はあるものの、長期的な視点で見ると多くのメリットがある制度です。
長期優良住宅の主要なポイント:
✅ 税制優遇が充実:最大455万円の住宅ローン控除をはじめとした豊富な税制メリット ✅ 高い住宅性能:耐震性、省エネ性、耐久性に優れた安心・快適な住まい ✅ 資産価値の維持:長期的な資産価値の維持が期待できる ✅ 社会的意義:環境負荷軽減とストック活用型社会への貢献
成功のためのポイント:
- 信頼できる建築パートナーの選定 長期優良住宅の実績豊富な住宅会社・工務店を選ぶ
- 総合的なコスト評価 初期費用だけでなく、税制優遇や維持管理コストを含めた総合的な判断
- 長期的な視点 30年以上の居住を前提とした計画立案
- 維持保全への理解 認定後の義務と責任を十分理解し、実行する意志
注文住宅をお考えの際は、これらの情報を参考に、ご自身の状況に最適な選択をしていただければと思います。長期優良住宅は、未来の豊かな暮らしへの投資として、多くの方にとって価値ある選択肢となるでしょう。
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この記事は2025年6月時点の最新情報を基に作成されています。制度の詳細や要件は変更される可能性がありますので、具体的な申請時には必ず最新の情報をご確認ください。