年収600万円での住宅ローン借入を検討中の方にとって、「実際にいくら借りられるのか」「月々の返済額はどれくらいなのか」「注文住宅は購入できるのか」といった疑問は切実な問題です。
本記事では、年収600万円の方が住宅ローンを組む際の借入可能額から適正な返済プラン、注文住宅購入のポイントまで、必要な情報を分かりやすく解説いたします。
【結論】年収600万円の住宅ローン借入可能額と適正金額
年収600万円の場合の住宅ローン借入可能額:約3,000万円〜5,500万円
ただし、無理なく返済できる適正額は3,000万円〜3,500万円程度となります。
項目 | 金額 |
---|---|
借入可能額上限 | 約5,500万円(返済負担率35%) |
適正借入額 | 3,000万円〜3,500万円 |
月々返済額(適正額) | 9万円〜10万円 |
返済負担率(理想) | 20%〜25% |
年収600万円は住宅ローンの利用者ボリュームゾーン
住宅金融支援機構「2023年度【フラット35】利用者調査」によると、【フラット35】を利用してマイホームを購入した人の世帯年収は、「年収400万円以上年収600万円未満」が37.5%で最も多く、全体の57.3%が「年収600万円未満」という結果でした。また、全体の平均年収は661万円となっており、年収600万円は住宅購入のメイン層といえます。
30代の共働き夫婦の場合、世帯年収が600万円程度になることも多く、マイホーム購入を検討する方が非常に多い年収帯です。
年収600万円の住宅ローン借入可能額を徹底解説
1. 年収倍率による借入可能額の計算
住宅ローンの借入可能額を把握するには、「年収倍率」を使った計算が基本となります。
年収倍率 = 住宅の購入費用 ÷ 住宅ローン契約者の年収
一般的に年収の「5~6倍」が借入金額の適正値だと考えられています。例えば年収600万円だと、借入金額3000万~3600万円くらいが適正ラインになります。
住宅金融支援機構「2023年度 フラット35利用者調査」によると、年収倍率の全国平均は約6.7倍でした。
住宅種類別の年収倍率(2023年度フラット35利用者調査)
住宅種類 | 年収倍率平均 | 年収600万円の場合の借入額目安 |
---|---|---|
土地付注文住宅 | 7.6倍 | 4,560万円 |
注文住宅 | 7.0倍 | 4,200万円 |
マンション | 7.2倍 | 4,320万円 |
建売住宅 | 6.6倍 | 3,960万円 |
中古マンション | 5.6倍 | 3,360万円 |
中古戸建 | 5.3倍 | 3,180万円 |
2. 返済負担率による適正借入額の算出
返済負担率(返済比率) = 年間の返済総額 ÷ 年収 × 100
返済比率の目安は、先述したとおり30〜35%とされていますが、この数字はあくまで目安であり、金融機関で借り入れができる上限金額となります。長期の住宅ローン返済を無理なく続けるためには、返済比率に余裕があるほどよいでしょう。そのため、理想とされる返済比率は20〜25%が目安といわれています。
年収600万円の場合の返済負担率別借入可能額
返済負担率 | 年間返済額 | 月々返済額 | 借入可能額(35年・金利1.5%) |
---|---|---|---|
20% | 120万円 | 10万円 | 約3,200万円 |
25% | 150万円 | 12.5万円 | 約4,000万円 |
30% | 180万円 | 15万円 | 約4,800万円 |
35% | 210万円 | 17.5万円 | 約5,600万円 |
3. 手取り収入から考える現実的な返済額
年収600万円の場合の手取り収入は約450万円〜480万円(月約38万円〜40万円)となります。
年収600万円の場合、手取り月収38万円の25%で計算すれば、月9.5万円までローンの返済にあてられます。返済額が月9.5万円の場合の住宅ローン借入額は、返済期間35年、固定金利1.54%で約3,100万円です。
手取り収入ベースでの理想的な返済負担率:25%以下
金融機関の住宅ローン審査基準
主要な審査項目
国土交通省の令和2年度民間住宅ローンの実態に関する調査より、審査でチェックされる項目から、重要なものを以下に整理します:
- 年収:安定した収入があるか
- 勤続年数:継続的な収入の見込み
- 返済負担率:年収に対する返済額の割合
- 他の借入状況:クレジットカード、カーローン等
- 年齢:借入開始年齢と完済年齢
- 物件の担保価値:購入予定物件の評価
年収600万円での審査通過ポイント
年収600万円あれば支払い能力は高く評価されます。借入額が適切なら、心配しすぎる必要はありません。
ただし、以下の点に注意が必要です:
- 他の借入がある場合:クレジットカードの支払い、自動車ローン、奨学金等も返済負担率に含まれる
- 勤続年数:一般的に2〜3年以上が望ましい
- 雇用形態:正社員が有利だが、契約社員でも審査は可能
年収600万円の現実的な住宅ローン返済プラン
パターン1:安全重視型(借入額3,000万円)
項目 | 内容 |
---|---|
借入額 | 3,000万円 |
返済期間 | 35年 |
金利 | 1.5%(全期間固定) |
月々返済額 | 約9.2万円 |
年間返済額 | 約110万円 |
返済負担率 | 18.3% |
手取りに対する負担率 | 23.4% |
メリット:家計に余裕があり、将来のライフイベントにも対応しやすい デメリット:購入できる住宅の価格帯が限られる
パターン2:バランス型(借入額3,500万円)
項目 | 内容 |
---|---|
借入額 | 3,500万円 |
返済期間 | 35年 |
金利 | 1.5%(全期間固定) |
月々返済額 | 約10.7万円 |
年間返済額 | 約128万円 |
返済負担率 | 21.3% |
手取りに対する負担率 | 27.3% |
メリット:住宅選択の幅が広がりつつ、無理のない返済が可能 デメリット:家計に多少の制約が生じる
パターン3:積極型(借入額4,000万円)
項目 | 内容 |
---|---|
借入額 | 4,000万円 |
返済期間 | 35年 |
金利 | 1.5%(全期間固定) |
月々返済額 | 約12.2万円 |
年間返済額 | 約147万円 |
返済負担率 | 24.5% |
手取りに対する負担率 | 31.4% |
メリット:より良い立地・設備の住宅を購入可能 デメリット:家計への負担が大きく、将来のリスクを考慮する必要がある
金利タイプ別の返済シミュレーション
借入額3,500万円・35年返済の場合
金利タイプ | 金利 | 月々返済額 | 総返済額 | 利息総額 |
---|---|---|---|---|
変動金利 | 0.4% | 9.6万円 | 4,040万円 | 540万円 |
10年固定 | 1.0% | 10.2万円 | 4,290万円 | 790万円 |
全期間固定 | 1.5% | 10.7万円 | 4,500万円 | 1,000万円 |
金利タイプ選択のポイント
変動金利を選ぶべき人
- 将来的に収入増加が見込める
- 金利上昇リスクを許容できる
- 繰上返済資金を計画的に準備できる
全期間固定金利を選ぶべき人
- 返済計画の安定性を重視する
- 金利上昇リスクを避けたい
- 長期的な家計管理を重視する
注文住宅購入のための資金計画
注文住宅の建築費用相場
2022年度の住宅市場動向調査によれば、新築一戸建ての平均所要資金は「土地の購入を含めた注文住宅で5,436万円(全国平均)」「建売住宅で4,214万円(三大都市圏)」となっています。
年収600万円で建築可能な注文住宅の目安
住宅ローン借入額 | 頭金 | 総予算 | 建築可能な住宅レベル |
---|---|---|---|
3,000万円 | 500万円 | 3,500万円 | コンパクトな注文住宅 |
3,500万円 | 500万円 | 4,000万円 | 標準的な注文住宅 |
4,000万円 | 500万円 | 4,500万円 | 充実した設備の注文住宅 |
頭金の準備について
住宅ローンの借り入れを行う際は、10%〜20%ほどの頭金を用意するのが望ましいと言われています。
2021年度フラット35利用調査によれば、年収600万円の方が用意している頭金の平均値は357万円だと言われています。
頭金準備の目安
物件価格 | 頭金10% | 頭金20% | 残り借入額(頭金10%) | 残り借入額(頭金20%) |
---|---|---|---|---|
3,500万円 | 350万円 | 700万円 | 3,150万円 | 2,800万円 |
4,000万円 | 400万円 | 800万円 | 3,600万円 | 3,200万円 |
4,500万円 | 450万円 | 900万円 | 4,050万円 | 3,600万円 |
住宅ローン減税(控除)の活用
2025年の住宅ローン減税制度概要
年末のローン残高の0.7%を所得税(一部、翌年の住民税)から最大13年間控除する制度です。
住宅種別の借入限度額(2025年入居・子育て世帯・若者夫婦世帯)
住宅の種類 | 借入限度額 | 控除期間 | 最大控除額 |
---|---|---|---|
長期優良住宅・低炭素住宅 | 5,000万円 | 13年 | 455万円 |
ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 13年 | 409.5万円 |
省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 13年 | 364万円 |
省エネ基準を満たしていない「その他の住宅」は、住宅ローン減税の対象外ですとなっているため、注文住宅を建築する際は省エネ基準への適合が必須となります。
年収600万円での住宅ローン減税効果
借入額3,500万円・省エネ基準適合住宅の場合:
- 年間控除額:3,500万円 × 0.7% = 24.5万円
- 13年間の総控除額:24.5万円 × 13年 = 318.5万円
年収600万円で住宅ローンを組む際の注意点
1. 将来のライフイベントを考慮する
40代は「支出のピーク期」とも言われます。特に、以下のような出費が重なりがちです。●子どもの教育費 高校・大学進学で年間100万円以上の支出も●住宅ローンの返済 毎月15万円×20〜30年●老後資金の準備 60歳以降の生活費・医療費に備える必要あり
2. 家族構成による影響
年収600万円で手取り額に対して基準を上回っていない場合でも家族構成によって借り入れ可能額は大きく異なります。たとえば、2人家族なら宅ローンに2,900万円充てられるかもしれませんが、5人家族で子ども3人という場合には手取りに対して問題ない返済負担率だとしても家計を圧迫してしまう恐れがあります。
3. 他のローンとの兼ね合い
以下のローンも返済負担率に含まれるため注意が必要です:
- 自動車ローン
- 教育ローン
- クレジットカードのリボ払い
- 奨学金の返済
- スマートフォンの分割払い
住宅ローンの金融機関選び
比較検討すべき要素
住宅ローンを選ぶ際に、複数の金融機関を比較することは非常に重要です。まずは金利の比較が基本となりますが、その他にも手数料、繰上げ返済の条件、取り扱うローン商品やサービスの種類、さらに審査の柔軟性なども考慮する必要があります。
金融機関選択のチェックポイント
- 金利
- 変動金利の水準
- 固定金利期間選択型の金利
- 全期間固定金利の水準
- 手数料
- 事務手数料
- 保証料
- 繰上返済手数料
- 審査条件
- 年収条件
- 勤続年数の条件
- 年齢制限
- 付帯サービス
- 団体信用生命保険の保障内容
- 疾病保障特約
- 金利優遇条件
年収600万円におすすめの金融機関タイプ
メガバンク
- メリット:安心感、窓口サポート充実
- デメリット:金利がやや高め、審査が厳格
地方銀行
- メリット:地域密着、柔軟な対応
- デメリット:金利水準にばらつき
ネット銀行
- メリット:低金利、手続きが簡単
- デメリット:窓口サポートが限定的
フラット35
- メリット:全期間固定金利、審査が比較的柔軟
- デメリット:金利がやや高め、物件条件あり
よくある失敗パターンと対策
失敗パターン1:借入可能額上限での借入
問題点:月々の返済が家計を圧迫し、生活の質が著しく低下 対策:手取り収入の25%以下を目安に返済額を設定
失敗パターン2:変動金利の金利上昇リスクを軽視
問題点:金利上昇により返済額が大幅に増加 対策:金利上昇シミュレーションを行い、上昇時の対応策を準備
失敗パターン3:諸費用の見落とし
問題点:登記費用、火災保険、引越し費用等で予算オーバー 対策:物件価格の3%〜7%程度の諸費用を事前に計上
失敗パターン4:頭金を入れすぎて手元資金不足
問題点:突発的な支出に対応できない 対策:生活費6ヶ月分程度は手元に残しておく
年収アップ後の借入額見直し
借り換えのタイミング
現在の住宅ローン金利と新規借入金利の差が1%以上ある場合、借り換えメリットが期待できます。
年収が600万円から上がった場合の選択肢:
- 借り換えによる金利引き下げ
- 追加借入による設備投資
- 繰上返済による総返済額削減
まとめ:年収600万円の住宅ローン成功のポイント
年収600万円での住宅ローン利用において、最も重要なのは「借りられる額」ではなく「無理なく返せる額」を見極めることです。
成功のための5つのポイント
- 適正な借入額の設定
- 年収倍率5〜6倍(3,000万円〜3,600万円)を目安とする
- 手取り収入に対する返済負担率を25%以下に抑える
- 十分な頭金の準備
- 物件価格の10%〜20%を目標とする
- 手元に生活費6ヶ月分程度の資金を残す
- 将来を見据えた返済計画
- 教育費、介護費用等のライフイベントを考慮
- 収入減少リスクを想定した余裕のある計画
- 適切な金利タイプの選択
- リスク許容度に応じて変動・固定を選択
- 金利上昇シミュレーションを実施
- 住宅ローン減税の最大活用
- 省エネ基準適合住宅の選択
- 控除期間中の繰上返済タイミングを慎重に検討
年収600万円は住宅購入において十分な年収水準です。適切な資金計画を立てることで、理想の注文住宅を手に入れることが可能です。複数の金融機関で事前審査を受け、最適な住宅ローンを選択しましょう。
住宅ローンは長期間にわたる重要な契約です。不明な点があれば、ファイナンシャルプランナーや住宅ローンアドバイザーなどの専門家に相談することをおすすめします。